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Der var engang en dreng スカイマスター

デンマーク映画 (2006)

『我ら打ち勝たん(Drømmen)』で高い評価を得たイェーヌス・ディシン・ラスケ(Janus Dissing Rathke)が、もう1本だけ出演(主演)したミュージカル的映画。赤ちゃんが空を飛ぶような奇抜な設定なので、全体が「絶対ありえない」ファンタジーの世界で統一されている。『我ら打ち勝たん』と同年の公開だが、イェーヌスには少なくとも1年以上の年令差がある。こちらの方がかなりお兄さんだ。でも、あどけなさは残り、美少年ぶりは磨きがかかっている。2015年に日本でもビデオスルーされた『アントボーイ(Antboy)』で蚤男を演じているニコラス・ブロ(Nicolas Bro)が、ここでも怪演を見せている。

映画では8本の歌が流れる。そのうちエンディングを除き7本は、映画の中で踊って歌うのでミュージカルと言えるかもしれないが、これらの歌や踊りは映画の進行とは無関係で、挿入シーン的に扱われているので、いわゆる英語圏でのミュージカルとは違っている。以下のあらすじでは、煩雑になるのでこの部分に関しては一切言及しなかった。ストーリーは、パル、トリル、ケルの3人家族(デンマーク人にとっても変な名前)に4人目の赤ちゃんが授かるとこらから始まる。その赤ちゃんのリッレに、“翼”とは言えない肉片が背中に付いていたことから、話が迷走して行く。肉片で空を飛ぶ赤ちゃん。危険が多すぎて、その肉片を除去せざるをえなくなった両親。そして、それを止めようとする主人公ケル、そしてその足を引っ張りながら助ける変な男エルフ。少し散漫で、歌もくどいが、何よりもイェーヌスがいい。

イェーヌス・ディシン・ラスケは最高に美しい。少年に美しいというのも変だが、理想の美少年像そのものである。相変わらず演技は上手だが、何せ映画がハチャメチャなので、演技を深化している余裕など与えてもらえない。でも、存在しているだけで目の保養になる。


あらすじ

ケルは、スマーティ・ボーイというおもちゃのロボットに夢中だ。おもちゃと言っても、あり得ないことに、音声認識と、人工知能的な会話ができ、細かな音声ナビもしてくれ、フルカラーでリアルなフライトシュミレーションも可能。だからケルは、家にいる時はずーっとロボットで遊んでいる。そんなある日、母のトリルが、赤ちゃんが欲しいと言い出し、父のパルも同調。「30分だけ、あっちに行ってもいいかい?」をくり返しているうち、改まって母が訊く。「ケル、私を見て。3足す1はいくつ?」。「4」。「当たり」。赤ちゃんを身ごもったのだ。庭に出て、花の冠を被って祝う3人。少し変わった一家なのだ。
  
  

母のお腹はだんだん大きくなり、遂にフォークリフト(これが自家用車)に乗せられて病院へ。無事誕生後、医者がやってくる。「万事順調。スムーズそのものでした」「2.6キロの女の子ですよ。上品で可愛らしい」「特に、前から見た時には」。最後の言葉にひっかかった父が訊く。「前から? どういう意味?」「何か、問題でも?」。「全然、可愛いお子さんですよ」「特に、前から見た時は」。気になった父は、「後姿は?」。「確かに、それは… 何と申しましょうか…」「ご覧になったら」と医者。赤ちゃんの背中には“翼”が付いていた。しかし、それは飛べるような羽ではなく、医者も「翼じゃない。皮膚が突起して垂れ下がってるだけ。すぐに、処置しましょう」と、こともなげに言う。「この子を、正常にしてやりましよう。前も後ろも」。しかし、父は「授かったままがいい」と言いきる。名前はリッレとなった。
  

数ヶ月後、リッレの“翼”もかなり長くなった。ケルは、ロボットと話しながらリッレとも遊んでやる。ある日、母にリッレの体重を尋ね8キロくらいと言われ、ロボットに「8キロの赤ちゃんが飛ぶのに必要な翼の幅は?」と訊く。そして、自転車に棒を取り付け、リッレの“翼”を水平に固定すると、そのまま郊外へ。そして、一本道を疾走しながら「さあ飛ぶんだ、リッレ」。「こんな風に」と腕を振ってみせる。振り返るとリッレがいない。後ろを飛んでいるのだ。喜んで「スカイマスター!」と何度も叫ぶケル。
  
  
  

しかし、家に戻って、両親の前で飛行を再現しようとした時、自転車に付けた棒が外れ、リッレの“翼”が車輪に触れて傷付いてしまう。「ケル、二度しないと約束しなさい。危険すぎる」と父。「でも、ほんとだよ。飛べるんだ」とケル。「リッレが飛べるとは思えない」「この子の“翼”をどうするか、そろそろ考えないと」。「どうかしてる。飛べるのに。見たんだ」と食い下がるケル。クローズアップの表情がいい。そこに、チャイムが鳴り、市民局の変なおばさんがやって来る。ずかずかと入ってきて勝手に座ると「お子さん、変わってるでしょ。だから、支援と指導に来ました」。憮然とした表情のケル。この女性、形成センターへの入院を強く勧めて帰っていく。しかし、悪いことは重なるもので、ケルの留守中、リッレがバラの植わった植木鉢を倒して病院へ。そこで強く切除を勧められて、承諾してしまう。
  
  

ケルが家に戻ると、そこには誰もいない。紙が1枚置いてあり、そこには「私たちは、形成センターへ行き、明日まで戻りません。リッレが翼につまづいたので、切除を勧められました。手術は、明日の朝8時です」云々と書いてある。リッレを救おうと自転車で出かけるケル。ロボットに訊くと「形成センターまでの距離は123.7キロあるよ。今の速度で行けば、到着予定時間は朝の7時32分」。しかし、それはたまたま下りだった。坂の登りはきつく歩かないといけない。しかも、タイヤに釘が刺さってパンクしてしまう。
  

目の前には偶然自動車の解体工場があった。ケルは、パンクを直してもらえないかと中に入っていく。ドアを叩くと、太ったおじさんのエルフが顔を出した。「大急ぎで入れ。外は危険でいっぱいだ」と言う。「パンクしたタイヤ直せる?」と訊くと、「悪いが、俺にはタイヤの修理なんて絶対に無理だ」とつれない返事。「お願い、重大事なんだ」と頼むと、「俺にはできない。俺が触ると、何でもバラバラになる」。「それを、信じろって?」。「ああ、ほんとなんだ」。「最低の言い訳だ」。そして、「自転車が直らなかったら、妹がひどい目に遭う」と、すがる。エルフは「これまでで、最も馬鹿げた説明だな」と言いつつ、根負けして「忘れるな!  君が頼んだんだぞ」と言い、パンクした車輪をそっと外す。すると、他の部分も次々と外れ、自転車はバラバラに。エルフの話は本当だった。唖然として言葉もないケル。その後、カバーで隠してあった自動車を発見、エルフが食べろと勧めるオートミールを作っている隙に、エンジンをかけて車を外に出すことに成功。
  
  

亡き父の大事なキャデラック・デ・ヴィルが盗まれたとあって、20年間怖くて一度も家から出なかったエルフも必死で追いかける。「止まれ! このキチガイ! 車を、めちゃくちゃにする気か?!」と言って、エンジンを止め、ケルを車から引きずり出す。そして、永久にこの家からは離れんと怒鳴っている最中に、なぜかクレーンで吊っていた車が落ちてきて家がペチャンコに。この映画は、あり得ないことだらけなので、ここで「なぜ」と思ってはいけない。とにかく、住む家がなくなったエルフは、しぶしぶケルの頼みを聞いて車に乗せてくれる
  
  

ガス欠でエンストしたら、ちょうどあったにがGS付きパンケーキ屋さん。大好物なのでどうしても食べさせろというので、時間を気にしながら付き合うケル。しかし、3枚目でキレて席を立ち、エルフも車の中で食べようと付いてくる。ところが、2人ともお金を持っていない。そこで、皿洗いをさせられることに。だが、手にしたものは何でも壊してしまうエルフは、片っ端から皿を割っていく(何と163枚も!)。その時、ケルの頭に妙案が浮かぶ。エルフにドアを触らせたらドアが壊れてくれるのではと考えたのだ。これは大正解。ドアだけなく、壁まで崩れてしまった。
  
  

仲良く話しながら車は順調に進んでいく。しかし、右折して野道に入った途端、ロボットが「暴風警報!」と言い出す。「嵐だ?  どこに?  窓の外を見ろ。新しい電池が、要るんじゃないか?」とエルフ。しかし、みるみる天候は悪化し、車の前後左右に木が倒れ、身動きできなくなってしまう。そこに登場したのが、「白雪姫と7人のこびと」と大人バージョン。車ごと救出して小屋まで連れて行ってくれる。
  
  

「天井が低いんだね?」とケル。「私たち、昔は小さかったの」。ユニークな設定だ。ケルに紅茶を出して、「乾杯。私は、白雪」。「それ、あなたの名前?」とケル。「2人で何してるの?」。「妹を探してる。翼が切られちゃう」。「翼があるの?」。「そうだよ」。「飛べるの?」。「うん、一度だけど」。そして、車はすぐ直ると言われ、外に見に行く。白雪と2人だけになったエルフは、天井が低いので、膝を付いたまま紅茶を飲むよう勧められる。必ず割ってしまうからと断るのだが、なぜか割れないい。幸運を呼んでくれた女性にエルフに一目惚れする。
  
  

しかし、タイムリミットに焦るケルは、エルフを強引に車に乗せ出発する。「俺は、やっと家を見つけた。愛もな」と言って、前進に非協力的なエルフ。そのエルフの足の上から強引にアクセルを踏みつけるケル。やっと正面に形成センターが見えてくるが、その手前には大きな池が。思わぬ事態に、停める間もなく車はドボン。しかし、その車は完全防水車だった。水は漏れてこないが、どこにも行けない。「もう、リッレを助けられない。後22分で、翼を切られちゃう。僕には何もできない」と絶望するケル。しかし、最後の手はあった。エルフがフロントガラスの真ん中を親指で軽く押すと、ヒビが入り始め、脱出に成功。
  
  

執刀医が血液恐怖症で手術開始が遅れていたため、幸い間に合ったケル。「リッレ!」「スカイマスター」と叫ぶと、リッレは飛び始めた。意地悪な市民局の変なおばさんだけは、「全然、フツーじゃない。変よ。これは異常なの。良くないわ。間違ってる。こんなことが、あっていいの? 間違ってるわ!」。でも、他の全員は大喜び。家に帰って近所を飛び回るリッレ。
  
  

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